運動習慣(1回30分以上の軽く汗をかく運動を週に2回以上1年間継続)で糖尿病患者の要介護リスクが低減
発信日:2020/02/07
新潟大学血液・内分泌・代謝内科学教授の曽根博仁氏、准教授の藤原和哉氏らの新潟県三条市の医療ビッグデータ(約1万人の特定健診、レセプト、介護保険データ)を統合解析して得られた報告。
対象は、2012年10月~15年3月に特定健診を受けた三条市在住の成人1万1,469人(39~98歳)のうち、ベースライン時に冠動脈疾患、脳血管疾患、身体機能障害がなかった9,673人。
2017年3月まで少なくとも2年間追跡し、①要介護状態(介護保険における要支援/要介護)の新規発生 ②運動習慣(1日30分以上の軽く汗をかく運動を週に2回以上1年間継続)と生活習慣病が要介護リスクに及ぼす影響について検討。生活習慣病の定義は、糖尿病:HbA1c 6.5%以上/血糖降下薬の現使用、高血圧:収縮期血圧140mmHg以上/拡張期血圧90mmHg以上/降圧薬の現使用、脂質異常症:non-HDLコレステロール170mg/mL以上。運動習慣はあるか否かを「はい」「いいえ」で回答。
中央値で3.7年の追跡期間中に要介護状態の新規発生は165人(1,000人・年当たりの発生率4.65)。年齢、肥満、高血圧、脂質異常症、喫煙など既知の身体機能低下と関連する危険因子を補正した多変量解析の結果、要介護リスクの有意な増加と関連する因子として糖尿病〔ハザード比(HR)1.74、95%CI 1.12~2.68〕、運動習慣なし(同1.83、1.27~2.65)、BMI 18.5未満(同1.63、1.02~2.63)、加齢(5歳上昇するごと:同2.48、2.23~2.75)が抽出された。
危険因子(生活習慣病3種と運動習慣なし)の保有数別の要介護リスクは、0個の者に対し、2個有する者では〔ハザード比(HR)1.95、95%CI 1.04~3.63〕、3個の者では(同2.11、1.07~4.15)、4個有する者では(同3.93、1.59~9.88)といずれも有意に増加。
糖尿病と運動習慣の有無で4群に分けた結果(上図参照)は、糖尿病なし/運動習慣あり群に対する要介護リスクのハザード比は、糖尿病あり/運動習慣あり群は〔ハザード比(HR)1.68、95%CI 0.70~4.04〕と有意差は見られなかったが、糖尿病なし/運動習慣なし群で(同1.82、1.22~2.71)、糖尿病あり/運動習慣なし群で(同3.20、1.79~5.70)と有意に増加。
報告者は、従来の研究にない強みとして ①特定健診・レセプトデータと介護保険データを統合したことで詳細な解析が行えた ②レセプトの保険病名によらず健診結果と診療内容を精査したことで追跡開始時の情報を正確に特定できたの2点を挙げ、「今回のコホート研究から、介護予防の面でも生活習慣病の予防に加え運動習慣を持つことの重要性が示唆された」と結論づけた。
「Combination of diabetes mellitus and lack of habitual physical activity is a risk factor for functional disability in Japanese」BMJ Open Diabetes Res Care(2020年1月24日オンライン版)
https://drc.bmj.com/content/8/1/e000901