喫煙と飲酒は食道がんリスクを高め合う!(愛知県がんセンター)

発信日:2020/07/09

 愛知県がんセンターがん予防研究分野の尾瀬功らの報告。日本で行われた大規模コホート研究である多目的コホート研究(JPHC-I, JPHC-II)、JACC研究、大崎国保コホート研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、高山スタディの計8コホート研究の統合解析結果。女性は食道がん罹患率、喫煙割合、飲酒割合がいずれも低く、詳しい検討ができないため除外。男性のみで解析。Cancer Medicine誌2019年10月号に掲載。
 喫煙習慣は(たばこを吸ったことがある・ない)、飲酒習慣は(お酒を飲む・飲まない)の2群。喫煙量は(なし、40パックイヤー※1)以下、40パックイヤー超)、1日あたり飲酒量は(エタノール換算※2で23g未満、23g以上46g未満、46g以上)の3群に分類。食道がんリスクはCox比例ハザードモデルを用いてコホートごとに算出し、その結果をメタ解析の方法で統合。統合したリスクを用いて交互作用を算出。
 結果、合計162,826人の男性を平均12.6年追跡し、954例の食道がんの発生を確認。この集団における喫煙率は60.6%、飲酒率は78.5%。喫煙も飲酒もしない人を基準として、喫煙者では2.77倍、飲酒者では2.76倍高い食道がんリスクを確認。更に、喫煙も飲酒も両方する人は8.32倍と食道がんリスクが高くなることを確認(上図参照)。同様に、喫煙量と飲酒量を3段階で評価した場合も、喫煙せず飲酒量23g以下の人に比べ、40パックイヤー超で飲酒量46g以上の人の食道がんリスクは16.8倍。交互作用により食道がんリスクが非常に高くなることを確認。
 また、リスクと喫煙者・飲酒者の割合から、喫煙または飲酒を原因として発生した食道がんの割合を推測する人口寄与危険割合※3を計算。日本人男性の食道がんの81.4%は喫煙または飲酒が原因で発生しており、喫煙は55.4%、飲酒は61.2%が食道がんの原因になっていた。このことにより、たばことお酒の両方を止めることで食道がんの約8 割を予防でき、たばこだけあるいはお酒だけ止めることでも約6割の食道がんを予防できることがわかった。
 報告者は、「喫煙と飲酒はそれぞれ単独で食道がんのリスク要因だが、合わさることでリスクが増強することを解明。食道がんの予防にはたばことお酒の両方を止めることが最も良い方法だが、どちらか片方を止めるだけでもある程度の予防効果が見込まれる」とまとめている。

※1 パックイヤー
 これまでに吸ったタバコの量を表す指標。1日あたりの喫煙箱数(1箱20本入り)と喫煙年数をかけた数字。例えば、1日2箱(20本)のたばこを10年間吸っている人のパックイヤーは2×10=20 。
※2 エタノール換算
 お酒に入っているアルコールがエタノール。節度ある適度な飲酒は1日平均エタノールで20グラム程度の飲酒。20gとは大体「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チュウハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などに相当。 
※3 人口寄与危険割合
 ある原因によって病気のどれだけの割合が発生したかを示す指標。言い換えると、もしもある原因がなかったら、どれだけ病気が減るかがこの指標によってわかる。

 愛知県がんセンター プレスリリース
 「喫煙と飲酒の組み合わせが食道がん罹患リスクを上げることを日本人約16万人の統合解析によって解明」(PDFファイル)
  https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/cc/press/pdf/200107press_oze.pdf

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