食事の多様性が脳の海馬の萎縮を抑制することが明らかに(国立長寿医療研究センター)
発信日:2020/10/22
国立長寿医療研究センターの大塚礼氏らによる日本人対象の縦断研究の結果。詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」9月2日オンライン版に掲載された。
被検者は、国立長寿医療研究センターが行っている、地域住民を対象とした老化に関する長期縦断疫学研究の参加者のうち、2008年7月~2012年7月に実施した2時点の調査に参加した認知症の既往者などを除く40~89歳の1,683人(男性50.6%、女性49.4%)。2時点の調査でMRI検査により海馬と灰白質の容積を計測。ベースライン時点での3日間食事記録を基に食事多様性指標※を算出して五分位に分類して比較検討。
結果、2年間の追跡期間中の海馬および総灰白質量の容積の平均減少率(±標準偏差)は、それぞれ1.00%(±2.27%)および0.78%(±1.83%)。海馬容積の分位別の減少は、第1五分位群(食事多様性が最も低い群)が1.31±0.12%、第2五分位群が1.07±0.12%、第3五分位群が0.98±0.12%、第4五分位群が0.81±0.12%、第5五分位群(食事多様性が最も高い群)が0.85%±0.12%。食事多様性スコアが高いほど萎縮が抑制されていた(傾向性P=0.003)(上図参照)。また灰白質も、同様の関係が認められた(傾向性P=0.017)。
報告者らは、「食事の多様性が高いほど海馬の萎縮と負の関連があることが示された。2年間の海馬の平均的な萎縮は1.00%。第4五分位0.81%と第1五分位1.31%との差は大きく0.5%であった(上図参照)。したがって多様に食品を摂取すると海馬の萎縮が軽減される可能性がある。ただ、食事の多様性と脳萎縮および認知機能との関連を確認するにはより長期的な研究が必要である」とまとめている。
※食事多様性指標(QUANTIDD:Quantitative Index for Dietary Diversity)とは、食事の多様性(いろいろな食品を食べること)を食品の量的な側面を考慮した上で、異なる集団間や異なる時期間で比較することができるようにスコア化した指標
「Dietary diversity is associated with longitudinal changes in hippocampal volume among Japanese community dwellers」
https://www.nature.com/articles/s41430-020-00734-z