トランス脂肪酸※1の上昇が認知症発症に関与する可能性を報告!日本人約1,600人を10年間調査(久山町研究※2)

発信日:2019/12/02

 九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授、本田貴紀助教および神戸大学大学院医学研究科の平田健一教授ら報告。アメリカ神経学会の専門雑誌「Neurology」に、2019年10月23日 に掲載。
 認知症のない久山町高齢住民約1,600名を10年間前向きに追跡。代表的なトランス脂肪酸 (エライジン酸) の血清濃度と認知症発症の関係を検討。血清エライジン酸濃度は、神戸大学質量分析センターの篠原正和准教授によりガスクロマトグラフィー-質量分析法※3を用いて測定。
 結果、血清エライジン酸濃度の上昇に伴い、全認知症、アルツハイマー型認知症の発症リスクはいずれも有意に上昇することが判明(上図参照)。
 報告者は、「本研究成果は、トランス脂肪酸を定量的に測定して認知症の関連を調べた初めての報告であり、過剰なトランス脂肪酸が認知症の発症に寄与する可能性を示す重要な知見。一方、トランス脂肪酸が認知症発症と関与する生物学的仕組みはまだ確定的ではないため、今後も検証が必要と考える」とまとめている。

※1 トランス脂肪酸は、脂質の構成成分である脂肪酸の一種。植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や植物油を高温にして脱臭する工程で生じる。また、天然でも、牛などの反すう動物に由来する乳製品や肉に含まれている。(厚生労働省)
  過剰摂取により心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加する可能性が高いとされている。
※2 1961年から福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約8,400人:全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、偏りのほとんどない平均的な日本人集団)の住民を対象に行われている日本を代表する疫学調査。
※3 多成分の化合物を気化させて分離し、分離させたそれぞれの成分が、どのくらいの量(質量)、試料に含まれているかを検出する装置。極微量な試料の定量に優れている。

 

メニューに戻る